中国医薬品業界の現状―五つの特徴

2010/07/01

 2009年、引き続き国際金融危機の影響を受け、欧米を含めた先進国における医薬品市場の成長が緩慢になった。一方で、中国は巨大な市場、豊富で安価なヒューマンリソース、また低コストな臨床試験リソースを有しており、医薬品市場はこの数年間連続して20%以上の年間平均成長率を維持、更に新医療改革方案の実施により、グローバル製薬メーカの中国に対する進出の足並みが著しく加速された。

 中国の医薬品業界全体の勢いが増し、目前にその巨大な潜在力を表しつつある。2009年は国際金融危機の影響を受けたものの、中国の医薬品工業における生産、販売、営利は、比較的にすばやい成長を果たした。医薬品の貿易高が世界市場とは逆に増加したことにも表されるように、国内企業の国際的競争力が上昇し、産業の構造も徐々に改善され、市場規模も急速に拡大されている。主には以下の5つの特徴に纏める。

「工業の持続的な成長」

 中国工業情報化部の統計によると、2009年度中国医薬品業界の累積工業生産総額は初めて1兆元の関門を突破、1兆382億元の総額で史上最高値となり、前年同期比21.1%増、工業増加額(注1)の累積額は前年同期比14.9%増と、全国工業平均水準(11.0%)より3.9%上回り、継続的また比較的に早い成長スピードを保った。1998~2009年、中国医薬品の工業生産総額は年毎20%増に達し、GDPの2倍のスピートで成長した。

2009年度全年

工業販売生産額(注2)

前年同期比

医薬品業界(累積額)

9915.9億元

21.4%増

化学原料薬製造業

1837.5億元

13.7%増

化学医薬品製剤製造業

2758.6億元

19.0%増

漢方薬製造業

1998.0億元

24.0%増

漢方切断生薬加工業

511.7億元

28.3%増

バイオ製品製造業

887.2億元

29.1%増

医療計器設備及び機器製造業

950.0億元

22.9%増

衛生材料及び医薬用品製造業

520.7億元

29.0%増

 2009年度、業界全体の工業製品販売率(注3)は95.5%、前年同期比0.15%増に達した。国際金融危機の中で、中国の医薬品業界は他の業界とは全く違う急激な増加が見られた。

「管理制度の改善」

2009年、中国政府が医薬製品への管理を著しく強化させた。主には以下のポイントに纏める。
1.強化されつつある審査許可プロセスによって、医薬品登録申請数が大幅に減少し、申告される製品の構造が明らかに改善された。
2.医療器機製品への管理作業の正常化が確保された。
3.中国のGMPがよりシステム的、科学的かつ全面的になるように努め、国家食品薬品監督管理局は2009年に1998年版のGMP改訂に着手、2010年に正式に公布するよう力を注ぐ。情報によると、新版GMPの条項数は1998年版の4倍近く増加し、医薬品の生産・品質管理の基本的な要求を詳しく記載する予定。また、1998年版の大部分の章節と主要な内容を保留し、EUのGMP基本要求とWHOのGMP主要原則内容を盛り込み、すべての医薬品の生産に適用させる。新版GMPでは、人員及び品質管理システムの構築を強く提起した点が特徴となっている。

「産業組織及び産業区域構造の最適化」

 「中華人民共和国薬品管理法」、「中華人民共和国薬品管理法実施条例」及び「医療器械監督管理条例」の実施に伴い、中国の医薬品監督管理部門は医薬品及び医療機器製品の生産・経営企業の管理をより規範化し、徐々に法律の改善を通して医薬品・医療機器業界の管理を強化させる目標を実現しつつある。

 なお、厳格にGMP、GSP、GAPなどの認証制度を実施することにより、医薬品生産・経営企業の品質に対する意識を大いに向上させ、一部の不合格企業を淘汰し、医薬品関連企業の氾濫、小規模型、秩序の乱れ、といった局面をある程度改善させた。2009年、中国の新しい産業構造改善の潮流に伴い、医薬品企業は様々な形式の合併、株式制への改革などを通して、産業構造の調整をスピードアップさせた。

 2009年9月、中国国務院は「国薬グループ」と「中生グループ」の合併を許可した。この動きは「国薬グループ」が国内最大級の医薬品大手グループ企業となる大きな一歩であり、2010年の「国薬グループ」の売上総額は1,000万元を超えることが期待できる。同時に、「国薬グループ」傘下の「国薬ホールディングス」が香港で上場、調達した資金は百億香港ドルを超え、「国薬グループ」の今後の発展における新しいエネルギーとなった。

 2009年10月、「上実グループ」はその医薬品関連資産の再編成案を公表した。即ち、「新上薬」社は「上海医薬」社を土台に、株式交換の方式で「上実医薬」社及び「中西薬業」社を吸収合併し、同時に「上薬グループ」及び「上実ホールディングス」傘下の医薬品関連資産を買収。抗生物質関係以外の「上実系」医薬品関連資産の上場を実現し、そのトータル市場価値は220億元を上回ることが予測される。「新上薬」社は、医薬品の研究開発・製造・流通・卸・小売販売が一体化した大型綜合医薬品リーディングカンパニーとなり、中国2番目の医薬品大手グループ企業となった。

 「新上薬」社は2009年度第4四半期に1億元を投資し、全国に医薬品流通卸会社を設置した。中でも、広州中山医薬有限会社、山東商聯生化薬業有限会社、常州亜邦グループなど、4社の地方流通卸リーディングカンパニーは、今回の「新上薬」社における株式権の合併買収の主な対象となった。

 2009年5月、「先声薬業」社は1.4億元の現金で「Pearl Oceanホールディングス」社の全株式権を買収し、「上海賽金生物医薬有限会社」の約35.1%の株式権の買収を実現した。11月、「先声薬業」社は約2億元で「江蘇延申生物科学技術株式有限会社」(以下「江蘇延申」社と称す)の約37.5%の株式権を買収した後、「江蘇延申」社の株主「China Vax」社の約74.49%の株式権の買収を通して、「江蘇延申」社の50.77%の株式権を取得し、ワクチン産業に進出した。さらに、12月、「先声薬業」社は「天津天達薬業有限会社」のロバスタチンカルシウム錠(Rosuvastatin Calcium Tablets)の権利を買収する予定を公表した。2009年12月、資金力豊富な「復星医薬」社は約1.6億元を投入し、「邯鄲摩羅丹薬業股分有限会社」との提携を開始した。

 近年、中国の医薬品企業は上場融資、ベンチャーキャピタルの誘致などの方法を通して、企業の実力を急速に向上させている。現在すでに約130社の医薬品企業が上海、深セン証券交易所に上場しており、海外にて上場した企業も20数社にのぼった。

 なお、国有及び国有持ち株会社による経済産業比率は、既に2000年の29%に比べ2007年には20%に下降した。三資経済(注4)の割合は25%に上昇、私営経済は19%、集体经济(collective-owned economy)は4%となった。同時に、産業区域の優勢が一層強さを増し、東部沿海地区の医薬経済規模は全国の66%前後を占め、江蘇、浙江、上海の3省市の医薬品工業の生産額は全国の27%を占め、うち14社が全国医薬品企業の販売トップ50に入っており、その他にも全世界販売トップ20に入る医薬品企業の大部分が当該地区に工場或いは中国本部を置いている。

 珠江三角洲地区の市場経済・民営経済は比較的に発達しており、化学薬物製剤・漢方薬・生物製薬及び医療機器医療設備などの分野においては、全国で上位の成績にある。北京・天津・河北・山東・遼寧を含む環渤海地区は、生物科学技術資源が豊富で、一定の産業基盤があり、地区内の省市は医薬産業連携・価格連携において互いに強く補い合うことで、大きく発展する潜在力を持っている。2009年、上海・江蘇・広東・浙江・北京の5省市の輸出入高は全国上位5位を占め、その貿易高は合計368.95億ドルで、貿易総額の69.4%を占める。なお、決起する中西部地区では、現地動植物の豊富な漢方薬材料資源を利用して、急速に漢方薬産業を発展させている。

「医薬品の輸出入額、世界市場とは逆に上昇」

 2009年度、国際金融危機の影響により、全世界医薬品市場の成長率は2.5~3.5%まで下落し、中国の医薬品貿易業界も1度は揺れ動いたものの、全体的には市場とは逆に、上昇する積極的な態勢を維持した。2009年度、中国の医薬保健品の輸出入額は531.5億ドルに達し、前年同期と比べ9.8%増加した。内訳としては、輸入は202.36億ドル、前年同期と比べ21.5%の増加。輸出は329.1億ドル、前年同期と比べ3.7%の増加。医薬品貿易の輸出超過額は126.7億ドル、前年同期と比べ16.6%の減少となった。

 金融危機以来、多くの国家はその衝撃を受け、自国企業の利益の保護を考慮することから、中国製品に対し、特にローエンドの医薬製品に制限を加え、中国に対する自国の貿易救済措置を明らかに強化させた。

 2009年度、中国医薬保健品業界の貿易摩擦の主な要因は、国外での中国製品に対する反ダンピング調査によるもので、4件の反ダンピング案件が起きた。関連する製品は、使い捨て注射器、ペニシリン工業用塩、グルコン酸ナトリウムなどで、関わった金額は1.4億ドル、関係する国はアルゼンチン、インド、EUである。その特徴は①関連する製品の範囲は原料薬品から医療機器製品にまで拡大。②関係する国は伝統的な市場から新興市場にまで拡大。③関わった金額は徐々に増加④同一製品が違う国或いは同一国で繰り返し反ダンピング調査の対象とされている。

「外資系企業にとっての大きな戦場、中国」

2009年、引き続き国際金融危機の影響を受け、欧米を含めた先進国における医薬品市場の成長が緩慢になった。一方で、中国は巨大な市場、豊富で安価なヒューマンリソース、また低コストな臨床試験リソースを有しており、医薬品市場はこの数年間連続して20%以上の年間平均成長率を維持、更に新医療改革方案の実施により、グローバル製薬メーカの中国に対する進出の足並みが著しく加速された。

 中国医薬品業界の外資利用の方法としてはすでに、独資のほか、合資、合弁の形態がある。商務部の統計によると、2009年度では、223社の外資系投資企業が新規設立されており、前年同期と比べて15.21%の減少した。また、外資実質利用額は11.11億ドルで、前年同期と比べて33.66%の増加した。2009年度、医薬品業界の主な投資国は中国香港、デンマーク、英領バージン諸島、米国、カイマン諸島、シンガポールなどである。

 現在、合資・独資企業の数は、中国医薬品企業全体のおよそ30%を占め、その売上高は全医薬製品売上高のおよそ26~27%を占めており、中国医薬品市場において重要な役割を担っていると言える。ファイザー、メルク、ロシュ、グラクソ・スミスクライン、ノバルティスファーマ、バイエル等、20社の世界大手製薬企業は皆すでに中国で投資・工場を設立しており、また多くの外資系企業は比較的大規模な研究・開発センターも設立し、同時に医薬品卸売業界にも進出しており、大中都市における市場占有率はますます高くなっている。

注1.【工業増加額】:工業企業が一定期間において、工業生産活動を通して新しく創出した価値である。工業増加額には二通りの算出法がある。
①生産法(増加額法)
工業増加額=工業総生産額(原価)-工業中間投入+今期増値税の納付額。
②収入法(要素分配法)、即ち生産過程に投入される各生産要素の産出額に基づいて計算する方法。

注2.【工業販売生産額】:貨幣の形式で表現される工業企業が一定の期間内における、自社製の工業製品の販売、或いは工業性労働サービスの提供の価値の総額。
完成品の販売による収入や加工請負料収入が含まれる。

注3.【工業製品販売率】:工業企業の一定期間における、製品の販売収入と工業総生産額との比率。生産と販売のバランスを反映する重要な指標である。即ち、比率が高ければ高いほど、製品が社会の現実ニーズに合致していることが判別できる。
計算方式:工業製品販売率(%)=工業販売生産額÷工業総生産額(原価)×100%

注4.【三資経済】:三資企業(合資企業、合弁企業、外資企業)がメインで構成された経済体制。

情報源:「医薬経済報」

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