中国医療改革の画期的な進展 ――「公立病院改革試行に関する指導意見」の公示

2010/02/26

中国医療改革の画期的な進展
――「公立病院改革試行に関する指導意見」の公示
2010年2月26日

 2010年2月23日、中国衛生部、中央機構編制委員会弁公室、国家発展改革委員会、財政部、人的資源社会保障部の5官庁は共同で「公立病院改革試行に関する指導意見」(以下「指導意見」と称す)を公布し、中国全土16都市にて、公立病院改革の試行を推進することを決定した。

※16のトライアル都市

地方

都市名

東部地方

遼寧省鞍山市、上海市、江蘇省鎮江市、福建省アモイ市、山東省濰坊市、広東省深セン市

中部地方

黒龍江省七台河市、安徽省蕪湖市、安徽省馬鞍山市、河南省洛陽市、湖北省鄂州市、湖南省株州市

西部地方

貴州省遵義市、雲南省昆明市、陜西省宝鶏市、青海省西寧市

 医療サービスの末端である公立病院は中国医療衛生界に存在するほとんどの問題点の「集合体」となっているので、公立病院の改革は中国医薬・衛生体制改革上、最も難しい局面となっており、中国衛生部の陳 竺部長は「極めて困難な任務」と述べている。今回の動きは中国の新医療改革がその「堅塁を攻略する闘い」に突入することを意味している。

 

公立病院改革のキーポイント――「公益性」

 「指導意見」は巻頭に「公立病院の公益性を堅持し、国民の健康に関する権利・利益を維持・保護することを第一に置く」ことを強調し、公立病院の改革試行の基調を定めた。陳 竺部長は、「公立病院の公益性と主導的地位を堅持すること」は公立病院改革上最も重要なポイントである」と述べた。

 近年、中国の公立病院は営利性運営モデルを取り、医薬品の販売による利益で経費をカバーするという実情は、公立病院が利益最大化を追求する原動力となっており、公立病院の公益性が失われつつある。
 公立病院は国民の健康を守る職務を執行する機関であり、その公益性の明確化は、医療保険及び医薬品などに関連する改革が順調に公立病院にて実施されることが前提である、と一部の業界有識者は認識している。

 

合理的に計画――「診察困難」を緩和

 現在中国では施設、人材、技術などを含む「メディカルリソース」の80%が、国土のわずか20%を占める大都市に集中しているので、患者が大病院に集まり、「診察困難」な状況を招いている。現状に対して、「指導意見」では、区域衛生計画の強化、合理的に公立病院の機能・機関数・規模を確定することによる中国衛生資源の構造、分布の改善、及びサービスシステムの改善を強調した。

 県レベルの病院の医療能力の向上、公立病院間・公立病院と基礎医療衛生機関間の業務分配と提携を重点的に強化し、一部の二級都市病院を地域衛生計画に基づき、コミュニティー衛生サービス機構に改造する。また、二級以上の公立病院の機能を明確にし、基礎医療衛生機関のサービスと水準を向上させる一方、価格、医療保険の支払などの政策をコントロールし、一般診療を受ける患者を基礎医療機関に分散させることが提起された。

 

プラスマイナス改革策――補償システム

病院が150元の利益を得るための方法

患者が負担する費用額

医薬品の販売【薬価の上乗せ(15%)】

1,000

医療サービスの実施【薬事サービス料】

150

政府補助金【政府資金投入】

0

 1985年以来、中国都市部・農村部住民の可処分所得(disposable income)の増長率は約20倍に対して、負担する医療費用は130倍上昇した。

 従来、中国の公立病院が経費の不足部分をカバーするため、「医療サービス利用料」、「薬価の上乗せ」、及び「政府の資金補助」という3つの手段をとってきた。「指導意見」はその中でも最も批判されている「薬価上乗せ制度」を確実に廃止することを明確にした。この動きによって、医薬品価格の合理化及び患者の医療負担の軽減に一定の効果が期待できる。

一方、薬価上乗せ制度の廃止による病院側の収入の減少に対しては、薬事サービス料の増設、一部の高度な技術を要するサービス費用の徴収基準の引き上げなどの措置、また医療保障基金の支給、及び政府資金投入の増額を通して補償する。

 薬事サービス料や政府補助金の金額に関しては、国家の関連法律法規に従い、各病院の業務内容、医療保障基金の負担能力、地方財政の負担能力、都市・農村部住民の収入水準などをトータルに考慮して、地方政府が各自に設定する。

 政府は公立病院の基盤建設、大型設備の購入、政策に定められた患者への補助などを負担し、公立病院が担当する公共衛生任務に対して専用補助金を支給、政府が指定する救急・救命・支援などの公共医療サービスの実施に必要な経費を保障し、また、中医(民族医)病院、伝染病、職業病の予防・治療、精神病、産婦人及び児童病院などに対して、政策上の優遇を与える、と「指導意見」で明確化した。

 

確実な利益――公立病院の医療サービスの改善

 政府資金の投入だけで、公立病院がその公益性を取り戻せるか?公立病院の内部管理機能が問題点として指摘した。

 それについて、「指導意見」は病院内部の行政決定・執行システムの改善、病院内財務会計管理制度などの改善について要求し、予算管理と支出管理の厳格化を明確にした。制度の改善及び奨励システムの構築を通して、病院が自主的にコストのコントロールを行うことが主な目的である。

 また、受診予約制度、急診グリーンゲートの設置などの措置によって、医療サービスのプロセスを最適化し、患者の待つ時間を短縮するなど、市民がより便利に医療サービスを受けられるように、公立病院の医療サービスにおける改善策の実施について要求した。

  「公立病院は直接国民の切実な利益、健康・福祉に関わっているので、改革を通して、国民に確実に新医療改革による利益を与えるべき」と陳 竺部長が述べた。

※公立病院改革試行の9つの内容

1.公立病院サービスシステムの改善
2.公立病院管理体制の改革
3.公立病院法人化管理システムの改革
4.公立病院内部運営システムの改革
5.公立病院補償システムの改革
6.公立病院への管理の強化
7.公立病院監督管理システムの改革
8.規範的な病院駐在医師向けのトレーニング制度の構築
9.多元的病院運営構造の推進

 

患者の分流――小病院&民営医療

 現在中国では1.4万件の公立病院(2009年11月、衛生部統計)に対して、2.6万件のコミュニティー衛生サービス機構があるが、小規模な医療機関の医師による医療サービスへの不信感のため、長時間並ばなければならないにもかかわらず、多くの患者は家から数分先にあるコミュニティー衛生サービス機構よりも大病院を選んでいる。

  患者を分散する目標を確実に実現するため、基礎医療機関の基盤建設及び人材育成により、基礎医療機関の医療サービスを提供する能力及び水準を高め、患者への「魅力付け」を実現しなければならない。また、規範的な病院駐在医師向けのトレーニング制度の構築が提起された。大病院は自分のためだけではなく、社会のためによい医師を育成すべき、と陳 竺氏が指摘した。

 国家の負担を軽減、医療サービスの多元化を実現させるだけでなく、より多くの民衆が基本医療サービスを受けられ、多種多様な医療保健に対するニーズを満足させるため、社会資本による病院の運営の推進も非常に重要である。

  「指導意見」では、医療保険指定機関の認定、科学研究のプロジェクトの立ち上げ、医師の専門技術職務の認定、生涯研修など、非公立病院に対して公立病院と同等な待遇を与え、サービス開設の許可、監督・管理などに関しても同様に扱うことを明確にした。

 政府はサービスを購入する方法で、非公立病院より公共衛生サービス及び公共サービスを提供してもらうことが可能になる。非営利性病院向けの税収優遇政策の実現、営利性病院向けの税収優遇政策の改善を行い、非公立病院への監督管理を強化し、非公立病院の健全な発展を導くこととする。

 民営病院と公立病院を「同じスタートライン」に立たせ、社会資本による医療衛生事業への参入を奨励・支援し、「投資機関の多元化、投資方式の多様化」のもと医療衛生事業の運営体制の構築を推進し、国民の様々な医療サービスに対するニーズを満足させるべき、と「指導意見」で明確にした。

 

「医・薬分離」影響――内陸部医薬品市場の拡大&関連企業のM&A

 2009年4月、中央政府は「中共中央国務院が医薬衛生体制改革の深化に関する意見」及び「医薬衛生体制改革近期重点実施方案(2009-2011年)」を公布、今後3年間で8,500億元の財政投入を増加することを提起した。また、2020年までの内陸部医療改革の政府指導意見に「医・薬分離」、薬価上乗せの廃止などの方向性が強調された。

 現在、中国の内陸部には約4,700の医薬品生産企業、13,000の医薬品卸業者、約30万の医薬品小売業者が存在している。「医・薬分離」によって、病院内にある薬局は医療機関から独立することになる。即ち医薬品メーカ、或いは小売業者も公立病院にある薬局の経営権を取得することが可能になり、よって、医薬品運営企業間のM&Aが盛んに行われ、業界資源がリーディングカンパニーに集中することが促進されるであろう、と一部の業界者が予想している。この「医・薬分離」の実現により、中国医薬品市場の持続的な拡大、及び業界の再編成を促進することが大いに期待されている。

  「新医療改革は中国医療産業の発展モデルを最適化にし、内陸部の医薬品業界の再編成を促進し、大手医薬品経営企業に大きな利益をもたらし、2010年内陸部の医薬品小売業界の売上は25%以上上昇することが予測される」と華夏医療集団の蒋 濤行政総裁が語った。

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