新医療改革方案の公布&7つのキーワード

2010/01/12

 国務院は2009年 4月7日に、「医薬衛生体制改革近期重点実施方案(2009―2011年)」(「方案」と称す)を公布した。「方案」では、「中共中央国務院が医薬衛生体制改革の深化に関する意見」(「意見」と称す)に基づき、2009から2011年にかけて、以下の5項目の改革を重点的に行うことを明確にした。

①基本医療保障制度の構築を加速化推進
②国家基本薬物制度の初歩的な構築
③基礎医療衛生サービス体系の健全化
④基本公共衛生サービスの段階的な均等化への促進
⑤公立病院改革の試行への促進
 
①基本医療保障制度の構築を加速化推進
 基本医療保障制度の構築の加速化を推進するには、基本医療保障がカバーする範囲を拡大し、保障水準を高め、基本医療保障基金の管理を規範に合わせ、都市と農村の医療救助制度を改善し、基本医療保障管理サービスの水準を高めるべき、と「方案」に明記された。

②国家基本薬物制度の初歩的な構築  
 「方案」は、国家基本薬物目録の選抜・調整管理機制を構築し、2009年初頭に国家基本薬物目録を初公開;基本薬物の供給を保障するシステムを初歩的に構築し、基本薬物を優先的に選出、合理的に使用することに関連する制度を構築すべきと強調した。

③基礎医療衛生サービス体系の健全化
 「方案」では、基礎医療衛生サービス体系の健全化については、基礎医療衛生機構の建設の強化、基礎医療衛生人員育成の強化、基礎医療衛生機構への補償システムの改革、基礎医療衛生機構の運営システムの変換を明確にした。

④基本公共衛生サービスの段階的な均等化への促進
 基本公共衛生サービスの段階的な均等化への促進に関しては、「方案」は基本公共衛生サービスが都市と農村の住民をカバーし、公共衛生サービス重大プロジェクト注1)の項目の増加、サービスの能力向上の強化、公共衛生サービスの提供に必要な経費を保障することを要求した。

⑤公立病院改革の試行への促進
 公立病院改革の試行を促進するには、公立病院の管理体制、運営システム及び監督管理システムの改革、公立病院の補償システムの改革の推進、多元化病院運営方式の形成の加速化が必要だと、「方案」が指摘し、公立病院改革のトライアルは2009年に開始、2011年から徐々に展開することを定めた。

 「方案」は、各レベルの政府が真剣に「意見」に提起された各項目の衛生投入政策を実行、改革に必要な資金を確実に保障し、政府資金を利用して、効果と利益を高めることを強調した。
 概算では、改革の目標を実現するため、2009年~2011年の3年間、各級の政府は合計8500億元の資金投入が必要であり、うち、中央政府からは3318億元を投入する必要があると想定された。

 医療改革を成功させるには多数の部門の共同作業及び5つの項目の同時進行が必要である。
また、「方案」の公布に伴い、以下7つのキーワードも注目された。

一.医療保険の全面的カバー
解読:「診療費用高騰」という問題を解決するには、薬価をコントロールするだけではなく、医療保険制度を構築して、補償清算基準を高め、個人負担の割合を引き下げることこそが肝心である。健全な社会保険体系の無い社会は決して調和社会とはいえない。(近年、中国政府が「調和社会の構築」を唱導している)。社会保険でカバーできる範囲が狭い、あるいは都市と農村間のギャップは、待遇水準格差の大きな「断片化の制度」の根源になる。医療費用の個人負担の割合の低減は、基本医療保険制度を構築する目的であり、社会文明の進歩の証である。
(コメンテーター:中国社会科学院 ラテンアメリカ所 所長 鄭秉文教授)

二.異地医療保険注2)
解読1:異地医療保険は定年退職者が他の地域での養老問題に関係するだけではなく、農民工などの流動就労者にも関係している。異地医療保険制度を構築するには、技術面の問題点より、各種の制度を調節する際にさらに多くの問題点が発生するのに遭遇するだろう。都市と農村住民のすべてをカバーできる基本医療保障体系を構築するため、都市部、都市と農村の結合部、及び農村部の住民を統一管理し、都市と農村の地域差を縮小しなければならない。地域格差の縮小は医療保険制度構築の方向とも言える。
(コメンテーター:中国人民大学 韓 克慶副教授)

 解読2:基本薬物制度は世界中で比較的普及しており、薬価の引き下げ、常用医薬品の提供を保障することには大きな役割を果たせる制度である。国家基本薬物制度は国家医薬品関連政策の要である。国家基本薬物目録には、主要な疾患の治療に必要な医薬品を収録しており、それらは最低限の医療衛生ニーズを満足するため、最も基本かつ必要な医薬品である。国家基本薬物制度を確実に実現するには、国家医薬品処方集、国家基本薬物目録及び臨床診療指針を制定しなければならない。国家基本薬物目録の最新版はすでに公布され、国家医薬品処方集の制定もスタートした。臨床診療指針に関しては、まず「抗菌類医薬品標準治療指針」を制定し、それをベースに、ほかの臨床疾病の治療指針を制定し、しかも医療機構で実施される予定。
(コメンテーター:衛生部病院管理研究所 呉 永佩教授)

三.基本薬物提供の保障
解読:基本薬物に対して、入札買付けの方式をとることは、薬価競争のためだけではない。基本薬物の安全性・有効性を確保する観点から、公開入札買付け及び統一配送方式の実施の最も重要な目的は、基本薬物の品質の保障である。中国では医薬品生産・経営企業が多く存在しており、各企業間の医薬品の品質に対する管理能力、及びリスクコントロール水準などにおいては、格差が存在している。入札買付け制度は、メーカーや関連企業の医薬品生産・経営の品質と能力に対する選抜でもある。基本薬物の安全性と有効性を確保するため、社会信用度が高く、品質管理能力が優れ、製品のリスクコントロール能力が高い企業を選出して基本薬物の生産と配送を行ってもらうべき。
(コメンテーター:国家食品薬品監督管理局 副司長 許 嘉斉氏)
  
四.末端医療機構の医務関係者の待遇
解読: 「受診困難」は主に農村部のへき地及び大都会の大病院に発生している。その根源は医療資源(マンパワー、技術力、設備、資金などを含む)分配の不均等であると考えられる。問題を解決するには、強制制度と奨励制度など硬軟両様の手段を用いて、設備、人材などの医療関連資源をバランスよく分配すべき。そして、指定施設試行の方式で、「病院駐在医師養成制度」を推進し、農村医療機構と基礎医療機構の医師を大病院で研修させてから、末端医療機構に戻らせ、農村やコミュニティーでの「受診困難」の問題を確実に緩和させる。
(コメンテーター:衛生部政策法規司 劉 新明司長)
 
五.基本公共衛生サービス
解読:公共衛生サービスの均等化の実現は、医療の改革、民衆に実利を与えることが基本であり、すべての国民が基本医療衛生サービスを享受することが目的である。均等化を推進するプロセスの中、サービス品質の差を重点的に解決しなければならない。根本から、新しい都市部と農村部を統一した衛生資金の調達及び投入方式を構築し、都市部と農村部の衛生事業のバランスよい発展を実現し、都市部と農村部の医療衛生機構が同等のサービスを提供し、同等な補償を受けられることを確保すべき。
(コメンテーター:清華大学経済管理学院 白 重恩教授)

六.公共衛生サービス重大プロジェクト
解読:公共衛生サービスは低コストで効果の高いサービスであるが、社会効果・利益の還元周期も比較的長いサービスである。公共衛生サービス重大プロジェクトの設立によって、公共衛生への資源の投入は、単なる一つの項目のためではなく、突発的な公共衛生事件、或いはある公共疾患に対応するためのものではなくなった。公共衛生サービス重大プロジェクトの設立は公共衛生の長期的かつ効果的な仕組み作りの重要な一歩である。
(コメンテーター:河南平煤医療集団総医院 任 文傑院長)
  
七.医薬品による利益で医療資金の補充
解読:公立病院償還システムの改革の目的は病院、医者と医薬品の買付け及び販売との利益関係を切断し、段階的に「医薬品の利益で医療に必要な資金を補充する」体制による問題点を解除することである。公立病院は政府職能を実現する機構として、社会公益性を追求すべき。但し、健全な償還システムは公益性を実現する根本的な保障である。「医薬品の利益で医療に必要な資金を補充する」体制をその根源から改善するため、医療改革方案に提起された「薬事サービス費用の追加設置」、「適切な医療技術サービス費用の調節」、「政府資金投入の増加」及び「社会医療保険の支払い方式の改革」などの措置を実現し、医療サービスに合理的な資金償還を与えるべき。合理的な償還システムがなく、公立病院自体が運営し、薬価の上乗せ及び検査サービスによる収入を用いて、病院が患者に診療を実施するための資金を補充させるだけなら、公立病院の公益性の実現は単なるそらごとになる。
(コメンテーター:衛生部中日友好病院 許 樹強院長)

 

注1:公共衛生サービス重大プロジェクト
婦女、児童、老人、また一部の地方住民の健康を深刻に脅かす伝染病、風土病、及び健康に影響を与える主な危険因子に対応するため、中国政府は公共衛生サービス重大プロジェクト(国家重大公共衛生服務項目)を設置・実施した。現在、結核症、エイズなどの重大な疾病の予防と制御、国家免疫計画、農村妊婦・産婦の入院・出産などが含まれている。
参考資料:
「2009年にスタートした6つの公共衛生サービス重大プロジェクト」(中智医誌)
http://www.ciic-medicalnews.com/kiji/090618.html

注2:医療保険異地清算:今まで、中国の医療保険制度は地域別管轄式をとっており、患者が所属する医療保険管理地域の政策と管理方法は他の地域の医療機関に適用できず、拘束力がなかった。その為、監督管理を実施するには、各地は医療保険が適用する医療機構を指定する方法を用いた。ところが、経済発展に伴い、人口の流動性が高くなり、特に一部の大都市では、流動人口がローカル人口を上回るほど増加しているため、従来の医療保険制度と「異地受診」の現実間の矛盾が日々激化した。
新医療方案の「2009年~2011年の3年間方案」では、まずは定年後、他の地域に移住する高齢者が居住地で受診及び清算できる方法を模索することを目標とする異地受診清算システムを構築することを明確にした。

そのほか、医療保障サービスの改善、「一カード通」(One stop 医療保険カード)の推進、医療保険業務担当機関と指定医療機関との間で直接清算を実現、新型農村合作医療に加入した農民が統一管理地域内で、自主的に受診できる指定医療機構を選ぶことの許可(もしくは受診できる指定医療機構を自主的に選べる許可)、他の県にある病院への転院手続の簡略化など。そして一般の就労者及び農民、倒産・経営困難企業の従業員、「農民工」などの流動就労者に対応する基本医療保障に関係する政策も検討されている。

 

【注4】走票:医薬品経営資格を持たない比較的固定した医薬品の販売ルート及び仕入ルートを有する個人が、合法的な医薬品経営資格を有する企業に一定の金額の税金、或いは「管理費」を支払い、同企業に所属すると見せかけ、個人の医薬品経営行為を「正当化」する行為。

 

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