「医療保険」拡大による医療市場の加熱

 2008年の中国医薬品市場は持続的に拡大し、使用される医薬品の構造は大幅に調節されるでしょう。しかし、その要因は市場のニーズと購買力の増加ではなく、政府資金が医療保険に投入され、市場を調節・制御するからです。

 民衆の医薬品安全への関心が、医薬品業界に新たな試練を与えることになりました。2007年は医薬品業界にとって、「整頓する年」になりました。同年国家が『薬品広告審査公布標準』、『処方管理弁法』、『薬品注冊(登録)管理弁法』、『薬品リコール管理弁法』、『薬品GMP認証検査評定標準』、『製薬業界水汚染物排出標準』、『中薬注冊管理補充規定』など一連の法規政令計10本余りを公布し、しかも、そのほとんどが2008年1月から施行されました。それゆえ、業界では2007年は「政策年」と呼ばれています。

 2008年初頭、「巨大官庁(注1)の設立」、「新しい医療改革の構想」、「医薬品入札制度の深化」、及び「医薬商業の合資」などが業界内外関係者の注目を浴びました。特に、国家関連部門の首長、人民代表の「両会」が開催された際の「医療体制改革」に関する発言が全国の注目を集めました。「医療費の高騰・医療へのアクセシビリティ」問題は国民全員の生活に関わり、医療体制改革は全国各地の医療機構に、医薬品の生産・流通の新しい政策の実施は数千社の生産企業と数万社の商業流通企業の生死に関わります。
 
 医療関連企業は社会、政治の環境などを考慮して、総合的に医薬品市場の変化を観察・分析、市場発展の脈動を把握し、企業発展の最速経路を見つけなければなりません。

一、マクロ政策に注目
――より徹底的に中国医薬市場の現状を分析するため市場に影響する各要因を知るべき

――巨大官庁の設立
 「両会」の決議により、SFDAが中国衛生部の配下となりました。政府は今後医薬業界への監督管理をより秩序化、強化させる傾向がありますが、医薬を一つの産業として、経済的な援助を与える機能は、場合によって、減退する可能性があります。
簡単な機構の合併は中国医療改革が直面する難問を解決することができません。「大衛生部」の看板より、内部職能の転換、実質上の歩調の一致が医療改革を促進する要です。
ある公務員が「地方医薬品監督管理機構の改革案は現在研究・制定中だ」と発言しました。即ち、地方医薬監督系統が同様に改革されるかどうか、現在ではまだ判断できません。

――医療体制改革
 衛生部は各省市衛生庁に国家医療改革案の公布前に、地方改革案を完成させるよう、要請しましたが、「両会」が開催される際に、公布される予定であった国家医療改革法案が結局公布されなかった現状から見ると、地方改革案の完成もなかなか難しいのではないかと思います。
医療改革の全体的な目標は:「2010年に、全国で基本医療衛生制度の枠組みの概要を構築し、都市部と農村部の間、地域間、各収入層の間の基本医療衛生サービスの格差の解消に努力し、有効的に国民の医療へのアクセシビリティの問題を緩和させ、2020年に、都市部と農村部をすべてカバーできる基本医療衛生制度を確立することである」とメディアに報道されました。以上により、政府の医療改革への介入は確実に増加し、公立病院はまちがいなく改革の重点になると予測できます。

医療体制改革の目的は、①「公共衛生」、「医療サービス」、「医療保障」、「医薬品提供保障」の4つのシステムのサポート、②新型農村合作医療制度の実施、③都市部住民の基本医療保険規模の拡大です。衛生部門は「医・薬分離」、即ち地域病院の医薬品は、「平進平出」(注2)の買付と販売方式を実施;或は病院の薬局の管理を医薬品会社が委託し、病院は直接に医薬品の販売をしない、この2種類の方法を提案しました。しかし、この2種類の方法はどちらも「以薬養医」(注3)の問題を根本的に解決できません。
①の提案の前提は、政府が地域病院に大量の資金を注入し、病院側が医薬品を販売しなくても、病院を運営していける十分な経済的余裕を持たすことです。しかし、財政の追加投入が日に日に大きくなり、将来の資金投入額規準に関しては、だれも確実に判断できません。
②の提案の場合、病院の医薬品販売方法を直接販売から、間接販売に変えただけで、結局は病院従来の資金供給方式を変えることができません。

二、業界の飛躍的な発展

 2006年、「国薬控股」を始めとする中国最大の3社の医薬商業公司の売上金額が市場総額の18.95%を占め、寡頭支配が成立する条件(20%)の臨界点に近づきました。従って、近い将来には、中国で売上高が千億元(約1.5兆円)以上の大手医薬品流通企業が現れ、業界のシェアが大幅に上昇し、市場が一部の大手会社に独占支配されることも考えられます。

 2007年に公布された新しい法律の影響を分析します。
・ 「水汚染物排出標準」の実施は、企業環境保護のコストを増加させました。影響を最も受けるのは原薬生産企業になります。
・ 「二税合一」(注4)の新しい税法の実施が企業の利益構成を新しく構築し、特に医薬流通企業が得るメリットが比較的に大きいです。
・ 「GMP新認証標準」、≪薬品注冊(登録)管理弁法≫、≪薬品リコール管理弁法≫は製薬企業に対する要求を引き上げました。

  要するに、新しい政策・制度の公布が、今後数年間に多数の中小企業を「閉鎖、合併、業務停止、業務内容転換」などの状況に直面させる原因となり、社会資源の再構築と集中を引き起こす可能性があります。

三、合資が流通業界の競争を加熱させる

 2008年2月、「広州医薬有限公司」が正式に設立されました。「聯合美華」が現金約5.45億元(約84億円)を支払、株式譲渡と増資の方式で、広州医薬の50%の株式を獲得しました。2007年5月、上海医薬が株式会社スズケン(日本)に同社が保有している上海滬中医薬有限公司の株式の50%を譲渡し、合資で「上海鈴謙滬中医薬有限公司」を設立することに合意しました。また、そのほかの中国系流通大手企業も内密に欧米の大手医薬関連企業と接触しています。

商業合資の目的は飛躍的な発展を果たすことです。具体的にいえば、代理拠点への配送の拡大、国外商品の代理品種の増加、区域市場の内包型拡張と資本参加・買収などの外延型拡張戦略の実施、総合的物流能力の強化、国内の一流医薬品小売チェーン店のブランド作りなどになります。

 合資により、外資企業は単なる製品の比較優位から、中国国内の医薬品企業の商業流通ネットワークの整理・調節により、更なる競争上の優位性を獲得する可能性があります。これは中国国内の販売構成に大きく衝撃を与えることになり、現存のビジネスモデル、経営モデル、品種導入などの方式に全方位的な挑戦を与えることになるでしょう。

四、疾病構成の変化に医薬市場品目構成の微調整

 政策、業界など2008年の医薬市場に大きな影響を与えるもの以外に、中国国民の疾病構成の変化も医薬品品種の構成に影響を与えました。統計によると、生活習慣の変化により、現在悪性腫瘍と心臓・血管疾病が原因の死亡率はすでに45%前後に達しています。よって、この二種類の疾病の治療薬市場が拡大され、中国医薬市場全体の構成に影響しました。IMS社の統計によると、今後5年間に国内の大病院(ベッド数100床以上)で使われる医薬品の増率は、抗腫瘍医薬品が1位、血液と心臓血管系統用医薬品が2位になると予測されています。(図1)

 中国主要都市のモデル病院で統計されたデータによると、2004~2007年、病院医薬品購入費総額の平均増率は20.17%です。購入金額は全体的に上昇する傾向ですが、この数年間の政府による数回の医薬品の値下げと、その他の政策の実施が原因で、2006年の前年比は下落しました。

 病院で使用される医薬品の金額別では、「抗感染薬」、「抗腫瘍薬」、「免疫調節剤」、「消化器官用薬及び代謝性医薬品」、「心臓血管系統用薬及び血液と造血器官用薬」が第1~5位です。2006年度の医薬品購入総額の増率が近年最低水準だった為、「抗腫瘍薬」と「免疫調節剤」が一直線に上昇;「抗感染薬」と「心臓血管系統用薬」が一時の低迷期を経て再び上昇;
「血液と造血器官用薬」が比較的に穏やかに成長;「消化器官用薬及び代謝性医薬品」が不安定な成長曲線を見せました。

 モデル病院で使われた全部の医薬品のうち、2015品種に対して統計を実施しました。1~200位の医薬品が総額の70.30%を占め、うち、1~100位は総額の51.44%、1~50位は34.34%、1~30位は24.53%を占めました。

 2007年にモデル病院に医薬品を提供したメーカは3076社、1~10位のメーカの売上は病院が支払った総額の16%を占めました。1~10位の企業の中で、80%が合資製薬メーカ、株式企業と民営企業はそれぞれ10%を占めました。国有大型企業は1~10位に入ることができませんでした。

注1「巨大官庁」:SFDAと衛生部を合併して設立された大衛生部のことを指す。(※詳しくは当社ホームページ記事≪1998年「独立」、2008年「回収」「家出」から十年後、国家食品薬品監督管理局が再び衛生部に「帰る」≫をご参考下さい。)

注2「平進平出」上乗せしないことにより、差額をなくすこと。

注3「以薬養医」:病院の各技術、サービスの価格設定を低くし、病院経営資金の不足分を医薬品の仕入れ価格にある程度上乗せして、患者に販売することで得た利益でカバーすること。

注4「二税合一」:中国では外資企業の所得税が内資企業より優遇されていたが、2008年1月1日より、≪中華人民共和国企業所得税実施条例(草案)≫が実施され、外資企業の所得税と内資企業の所得税を統一した。

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